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これはカレー店開業を決意したオトコの軌跡である。

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前回までのおさらい

彼の名前は苅田玖珉(カルダクミン)。
学生時代になんとなく参加した
海外ボランティア活動で訪れた
スリランカで出会ったカレーに
魅了されたオトコである。

<第一章 開業決意までの日々>

カレー店開業記 〜第一章 開業決意までの日々〜 | 歩々是道場 〜脱力系税理士のblog〜

<第二章 経営理念の策定>

カレー店開業記 〜第二章 経営理念の策定〜 | 歩々是道場 〜脱力系税理士のblog〜

<第三章 店舗コンセプトの決定>

カレー店開業記 〜第三章 物件に求める条件をかためる〜 | 歩々是道場 〜脱力系税理士のblog〜

物件探し

ネット検索で相場感を知る

物件を探すにあたって、
まずネットで検索してみた。

多くの不動産情報サイトがヒットし、
物件情報も多数出てきた。

しかし、生きた情報はネットからは
得られない。

これらで相場感を学んだ上で
沿線沿いの不動産屋さんを
訪れることにした。

地元不動産屋に話を聞く

その際に、できるだけ
その地に昔からあるであろう
古めかしい不動産屋にこだわった。

大手不動産チェーンの社員さんは
当然転勤がある中で赴任している。

地元への愛情というか熱心さで、
欠落している部分があるように
感じていた。

住まい探しならそれでもいいかも
しれないが、店舗物件選びでは
やはり地元の不動産屋さんが一番だ。

灘区のとある不動産屋に行くと、
その町の取組みや商店街の中心人物など、
ネットでは得られない情報をもらえた。

また、思ったよりもファミリー世帯が少なく、
単身者が多いといったことも教えてもらえた。

やはり、地元不動産屋さんは強い。

候補物件は2つ

やりとりの中で、候補となる物件は
最終的に2つに絞られていた。

一つは駅から徒歩1分の角地に
ある雑居ビルの1Fで、
元々は事務所利用だった物件。
水回りなどの設備はまったくない。
形としては非常に使いやすそう。

もう一つは、駅から徒歩5分の
飲食系のテナントが軒を連ねる
雑居ビルの2Fである。
同じフロアには飲み屋がもう1軒ある。
先月まで営業していたスナックの
居抜き物件である。

<前者>

駅から徒歩1分・・・アクセスばっちり

ビル1F・・・人目につく、店の外観を触りやすい

角地・・・行列で迷惑をかけにくい

二方向に窓・・・店内が明るい

事務所利用物件・・・内装工事の自由度は高い

<後者>

駅から徒歩5分・・・悪くはない

ビル2F・・・人目につかない、店の外観は触りにくい

窓なし・・・店内が暗い

スナックの居抜き物件・・・配置などに制限あり

条件としては<前者>の方がかなりいい。

店の前をとおる人が目を引くような
エントランスを設けることもできる。

また、店の前に観葉植物を並べ、
緑の合間から太陽の光が差し込む
店にすることだってできる。

その分、家賃も<前者>の方が格段に高いが。

そして、もう一つの懸念材料が
内装工事などの初期投資。

<前者>の方が格段に高くなる。

水回りからすべて一から
工事する必要があるからだ。

物件を即断

コストの比較

苅田には100万円を少し
超えるくらいの貯金しかない。

あとは親が“いつかのために”と
貯めてくれていた200万円、
あわせて300万円の自己資金しかない。

先ほどの不動産屋さんの話では、
「自己資金の2倍くらいしか
借りられへんと思うよ」という
アドバイスももらった。

借入ができたとして、
資金総額は900万円である。

<前者>の場合、内装工事で
300万円くらいはかかりそう。
エントランスなどで理想を追い求めれば
500万の大台は突破するだろう。

<後者>だと、水回り関係の工事や
床の工事が必要ない分、
内装工事代金が100万円くらいに
おさえられそうである。

そして、家賃も全然違う。

<前者>は月25万円。
さらに保証金として
6ヶ月分150万円を
入れないといけない。

<後者>は月16万円。
保証金は同じく6ヶ月分で
96万円である。

家賃を除く初期投資金額で、
250万円くらいの差があり、
さらに毎月の家賃が9万円ちがう。

ジャッジは自分本位に

もちろん大切なのは絶対的な金額だけでなく、
それだけの支出に見合うだけの価値があるか、
というジャッジである。

ここで大切なのは、その価値の判定を
世間からジャッジするのではなく、
自分からジャッジすることである。

世間一般的に価値があるかどうかではなく、
自分自身にとって価値があるかどうか。

世間的には、駅に近くて角地の1F、
高くて当たり前である。

しかし、苅田にとって本当に
それらの条件が付加価値として
認識すべきなのか、
そこが大切である。

<後者>に即決

苅田が開くカレー店の経営理念は

“スリランカの味を忠実に再現したカレーを提供し、
本物を求める人がわざわざ訪れる店であり続ける”

である。

また、ひとりで運営していく以上、
カウンター中心の配置で、
テーブルは1つか2つで十分。

そして、1,200円という上代である以上、
通りがかりにポンと入る店ではない。

この店をめがけて訪れてもらう、
そんなコンセプトの店である。

であるならば、1F角地でなくても
問題はないし、駅から徒歩5分なら
十分に許容範囲内である。

繁盛した場合の行列対策としても、
カレー店に行列ができるのは
たいていランチタイムである。

<後者>のお隣は飲み屋さんで
昼間に行列ができたとしても、
それほど迷惑をかけることには
ならないだろう。

であれば、角地での行列対策も
絶対必要ではない。

採光面でも大きく差がある。

<前者>だと二方向に窓があり、
太陽光が降り注ぐ。
これはとても魅力的である。

これに対して、<後者>には窓がない。

さいわい、廊下が外に面しているので
入り口側に大きなガラスを据えれば、
最低限の明るさは確保できそうだが、
それでも<前者>には遠く及ばない。

採光面で弱いということは、
店内の照度が低くなるということ。

これは店内照明で補うほかない。

ただ、苅田にとってこの点は
最初からお金をかけるポイントに
入っていた。

それは、SNSでの波及こそが
最高の広告材料になると
考えているからだ。

SNSでの波及効果を考えた場合、
一般客の撮る写真が広告素材となる。

さっとスマホを取り出して撮っても
いい感じの写真が撮りやすいように、
照明デザイナーに入ってもらう。

ここは苅田の当初からのこだわりであり、
ここにはけちらずにお金をかけることを
最初から決めていた。

太陽光には負けるが、明かりについては
プロに依頼して作り上げていくので、
それほど心配はしていなかった。

苅田は<後者>に即決した。

チカラを発揮した経営理念とコンセプトの決定

こうして並べて比較してみると、
世間的に価値があるとされる要素は
彼にとっては「あったらいい」程度であり、
必要不可欠な要素ではなかったのである。

このジャッジを彼がなぜ速やかに行え、
<後者>に即断できたか。

それは事前に“経営理念”や“店のコンセプト”を
決めていたからである。

自分の軸を決めていたからこそ、
その軸に照らして必要か否かを
素早く判断することができた。

この時点で経営理念や店のコンセプトが
なかったとしたら、と思うとぞっとする。

世間一般的な物件価値だけで
ジャッジをしてしまって、
必ずしも必要としていない点にまで
多くのお金を使ってしまって
いたかもしれない。

自分の軸を決めることの重要性を
苅田は再認識した。

次のハードル。資金調達へ。

苅田はすぐに電話で<後者>を借りたい旨を伝え、
手付金10万円を振り込んだ。

次は資金調達だ。

(続く)

※ この物語はフィクションです。

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【編集後記】
黄金週間はとくに休むことなく、
いつもどおりに過ごしました。
5月末に家族旅行を計画しているので
そこが私にとっての非日常ゾーンです。

【昨日の一日一新】
ハナキチルーム 野菜たっぷりプレート
(ごはん、カレー、みそ汁はおかわり自由)

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■ 石田修朗税理士事務所HP

開業支援・経営計画支援の石田修朗税理士事務所

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石田 修朗

1976年生まれ。B型。姫路出身。 (雇わず、雇われずの)“ひとり税理士”として活動中。テニスとカレーを愛する、二児の父です。経営者の不安を安心に変えることにこだわっており、脱力することと手を抜くことのちがいを意識しています。