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共同事業経営について、そのスタイルを検討します。

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共同事業経営で考えられる3つの形式

「共同で事業経営したい」
頻繁ではないものの
定期的に相談いただく事例です。

「二人で事業を経営して、もうけはきっちり折半したい。」

こういったニーズはかなりあるように思います。

では、一体どのようなスタイルがあるでしょうか?

共同での事業経営のスタイルは主に3つあります。

1.個人事業主とその従業員

Aさんが個人事業として開業して
Bさんが従業員として従事する
パターンです。

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2.法人設立

AさんとBさんが共同で出資して
法人を設立し、役員に就任。
二人は法人から役員報酬を
受け取るパターンです。

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3.有限責任事業組合

有限責任事業組合(LLP)を設立し、
事業を営むパターンです。

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それぞれの特徴をみていきましょう。

1.個人事業主とその従業員

Aさんが事業を開業し、Bさんはその“Aさん事業”に
従業員として関与し、毎月給料を受け取る形態です。

【メリット】

① 簡単にスタートできる
② 消費税の免税期間を長くとることができる

なによりも、他の方法と比べると
事業開始にいたるまでが簡単です。
税務署に開業届を提出すれば、
事業スタートです。

また、消費税の納税義務についてもメリットがあります。
(売上規模が1,000万円超の場合において)
個人事業でスタートして、途中で法人になれば、
最大で4年間免税期間を設定できます。

【デメリット】

① 完全な折半は困難である
② 事業について責任(リスク)がAさんのみに生じる

最大の問題点はココだと思うのですが、
完全な折半はムリです。
たとえば、Aさんの事業からBさんへの給料として
年間600万円支給したとします。
これによって、Aさんの事業所得が600万円に
なったとします。
Aさんの事業でのもうけは600万円。
Bさんの給料も600万円。
一見均等に折半できたように見えます。

しかし、Aさんのもうけは事業所得です。
青色申告であれば65万円の控除がありますが、
それでも535万円が税金課税のテーブルに上がります。

一方、Bさんの稼ぎは給料です。
給与所得者には給与所得控除があります。
174万円を控除した426万円が税金課税の
テーブルに上がります。

これだと、Aさんの方が税負担が多くなります。
しかも、Aさんの場合は事業所得ですので、
一定以上稼ぐと事業税(5%)が課税されます。

つまり、給料の額を調整してAさんのもうけと
Bさんの給料でバランスを取ったとしても、
それでは平等とはいえません。

税制上の取り扱いの違い(事業or給与)に起因する
所得税や住民税、事業税といった税負担の違い、
これに伴う国民健康保険料の違いを解消することは
現実的には難しいでしょう。
両者の家族構成に違いがある場合などは、
結果として出てきた納税額・保険料の
精算という形を採ることもできません。

そもそも、AさんのもうけとBさんの給料を
完全に一致させることも難しいです。

また、事業についても責任負担の面でもギャップが生じます。

例えば事業で借り入れが必要だった場合、
融資を受けることができるのはAさんだけです。
この借り入れについて、Aさんは無限で責任を負います。
取引先に対する支払も同様です。
Aさんは自己破産しないかぎり、返し続ける義務があります。
Bさんにはこのリスクはありません。
商売がうまくいかなくなったときに、他で仕事を見つけて
移ってしまえば、Aさんの事業とは一切の縁が切れます。

これらの見えざるリスクをきちんと勘案して
AさんからBさんに支払う給料を決定し、
最終的に所得(取り分)に差が出たとしても
それは仕方ないものとして
両者が完全に折半することを諦めれば、
この形式は意味のあるものになるでしょう。

2.法人設立

AさんとBさんがそれぞれ一定額を出資して、
法人(会社)を設立して、AさんとBさんは
設立した法人から報酬を受け取る形です。

【メリット】

① (報酬として)平等に配分できる
② 有限責任制の組織体である
③ 税制・経営面で有利になる点もある

メリットはなんといっても“平等性”です。
AさんとBさんが同額の役員報酬を受け取れば
両者ともに“給与所得”として同額を受け取るため、
両者が受け取る経済的利益は平等です。

また、法人のオーナーであるAさんBさんは、
法人がもし倒産したとしても、その出資額が
パァになるだけで、それ以上の負担は求められません。
これを「有限責任制」といいます。
(個人保証を行っている場合はこの限りではないです)

さらに、税制面などでもメリットがあります。
個人事業よりも、経費として認められる範囲が広がります。
一定額以上のもうけになると、税率が低く抑えられます。
さらに、法人として事業を行えば
社会的信用度は多少なりとも高まります。
これもメリットといえるでしょう。

【デメリット】

① 設立・維持にコストがかかる
② 決別時の株式のやりとり
③ 消費税の免税期間が短くなる

法人を設立するには、コストがかかります。
通常の場合、株式会社ですと24万円、
合同会社では10万円がかかります。
社会保険への加入義務もあります。
また、税理士などに業務依頼する際にも、
個人事業と比べると高額になることが多いです。

また、おそらく50%ずつの出資で始めることに
なると思いますが、途中でBさんがこの事業から
抜けたいということが出てこないとも限りません。
その場合、AさんはBさんの保有する株式(持分)を
Aさんもしくは会社が買い取る形になります。
ここでAさん個人もしくは会社からの
キャッシュアウトが想定されます。

これだとまだいい方で、最悪の場合は株を保有され続け、
経営に口出しされたりします。

さらに、(売上規模が1,000万円超の場合において)
消費税の免税事業者である期間が最大で2年間となります。

3.有限責任事業組合(LLP)

LLPは、民法上の組合の特例として創設された事業体です。

その特徴は大きく3つあります。

(1)組合員(出資者)全員の有限責任
(2)柔軟な組織運営
(3)構成員(パススルー)課税の適用

【メリット】

① 有限責任制である
② 法人税が課税されない(パススルー課税)
③ 平等に配分できる

前日の法人の場合と同様、有限責任制です。

また、この組織には法人税が課税されません。
一年間の活動で獲得した利益はその組合員に分配され、
その分配された組合員の所得として課税されます。

AさんとBさんでLLPを設立した場合、
そのLLP自体には課税が生じることはなく、
AさんとBさんにその分配割合に応じて
配分されるLLPの所得について
AさんとBさんそれぞれについて所得税が
課税されることになります。

AさんとBさんへの分配割合を50:50にしておけば、
平等な配分(完全な折半)が達成されます。

【デメリット】

① 融資の実現性
② 解散のリスク

資金調達の面で苦しむことが予想されます。
金融機関は前例がないものには慎重です。
設立したてのLLPに融資を実行してくれる
金融機関は多くないでしょう。
自己資金での運営ができる場合には、
気にする必要はありませんが。

最大の問題点は②です。
LLPは組合員が2人以上必要です。
Bさんが脱退の意思を示した場合、
脱退して2週間以内に誰かを見つけてこないと
LLPは解散しなければなりません。

せっかく築いてきた組織が一気に崩壊します。
組合員相互間に相当程度の信頼性がなければ、
この事業体をとることはオススメできません。

まとめ

相談を受けた際に確認することは、
「折半の正確性をどれだけ求められるか」です。

きっちり折半にこだわられる方々には
法人設立しか道はないと案内しています。

両者の取り分に多少のずれがあっても
それは容認されるのであれば、
個人事業主+従業員のパターンです。
機動性が高く、メリットも大きいです。

LLPは脱退リスクのデメリットが大きいので、
基本的にお勧めしていません。

人と人の関係性が絡むので、これが正解という
やり方は無いと思います。
大切なのはどういったことが起きうるのかを
想定して、事前に対策を決めておくことと、
ある程度の事態には寛容に譲り合う精神では
ないでしょうか。
それがあれば、形式はどうであれ、事業は
継続できるでしょう。
逆もまたしかり・・・。

では。

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【編集後記】

錦織選手、初戦からフルセットで辛勝。
第2セットのタイブレークを落としたのが
結果的に相当まずかったですね。
芝のコートは足にかなり負担がかかるので、
足の具合が心配です。

【昨日の一日一新】

スタバ チョコレートクランチフラペチーノ

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石田 修朗

1976年生まれ。B型。姫路出身。 (雇わず、雇われずの)“ひとり税理士”として活動中。テニスとカレーを愛する、二児の父です。経営者の不安を安心に変えることにこだわっており、脱力することと手を抜くことのちがいを意識しています。