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税理士受験シリーズ。先週に引き続き、圧縮記帳についてお伝えします。

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税法上の優遇規定 〜圧縮記帳〜

税法上の優遇規定として、圧縮記帳というものがあります。

補助金などの受給時における『課税を繰延べ』てくれる制度です。

この優遇規定を受けるためには、要件があります。

①“〇〇圧縮損”という費用(特別損失)を計上する ②“〇〇圧縮積立金”という積立金を積み立てる

このいずれかを行うことによって、圧縮記帳が適用されます。

①のことを「直接減額方式」といい、 ②のことを「積立金方式」と呼びます。

先週のブログでは、①「直接減額方式」についてお伝えしました。

課税を繰り延べるためとはいえ、実態のない損失を計上することが
適正な期間損益計算を掲げる企業会計の立場からは好ましくないと
いう問題点があります。

これを解決してくれるのが②「積立金方式」です。

積立金方式の仕組み

①の直接減額方式では、損失を計上して利益を打ち消すことで
課税対象額を引き下げて、課税を繰り延べます。

言い換えれば、そうすることで補助金収入による利益は打ち消され、
株主への配当財源である繰越利益剰余金に加わることがありません。

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②の積立金方式では、いったん補助金収入を利益計上したうえで、
その分増加した繰越利益剰余金を“圧縮積立金”に振り替えることで
繰越利益剰余金を減らし、株主への配当財源から補助金収入を
取り除くという行為を行います。

いったん補助金収入が利益に上乗せ

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積立金の積立は繰越利益剰余金の減少

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その結果、繰越利益剰余金を①「直接減額方式」と同様に

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積立金を積み立てることで配当財源から外す意思表示を行います。

それを要件にして、税額計算上圧縮損相当額の損金を認めて
税負担を繰り延べてくれるのが②「積立金方式」です。

積立金方式の圧縮記帳は、税効果会計の対象になる

では、補助金相当額を積み立てればいいか、というと
そう単純にはいきません。

積立金方式の圧縮記帳の適用を受けた場合、税務上は
取得原価の一部を先食いして課税を繰り延べるわけですから、
補助金で取得した資産の会計上の簿価は取得原価ですが、
税務上の簿価は取得原価から圧縮額を控除した金額です。
つまり、会計上と税務上の簿価にズレが生じることになります。

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会計上の簿価>税務上の簿価、ですので、
“繰延税金負債”の計上が必要となります。

例えば、50,000円の補助金に対して圧縮記帳の適用を受けるために
積立金方式を選択すると、簿価の差が50,000円生じることになります。

法定実効税率を40%とすると、20,000円の繰延税金負債を
計上する必要があります。

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するとどうなるか。

法人税等調整額が借方に20,000円計上されるため、
当期純利益の計算上、20,000円が控除されます。

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つまり、50,000円の補助金収入に対して
20,000円の法人税等調整額が作用して、
結果的に当期純利益(税引き後)は
30,000円しか増加しません。

この状態で圧縮積立金を50,000円積み立てると、
繰越利益剰余金の額が直接減額方式の場合と比べて
おかしくなってしまいます。

そこで、積立金方式の場合において税効果会計の適用があるときは、
補助金収入の60%(1-法廷実効税率)相当額を“圧縮積立金”として
積み立てることになります。

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財務諸表論の第3問では、ほぼ間違いなく税効果会計適用対象の
会社のB/S、P/L作成問題が出題されます。
ということで、②「積立金方式」を採用する場合の積立額は
補助金相当額の全額を積み立てるのではなく、補助金収入の
(1-法廷実効税率)相当額を積み立ててください。

そして、この税効果会計にはさらに減価償却が絡んできます。

会計上の減価償却は取得原価を基に行います。

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しかし、税務上の減価償却は取得原価から圧縮額相当額を
控除した残額を基に行います。

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ということは、減価償却による課税の繰延の“精算”が
第1期からスタートします。

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この差額の7,500円分だけ帳簿価額のズレが解消するため、
繰延税金負債と圧縮積立金をそれぞれ取り崩す必要があります。

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まとめ

圧縮記帳を②「積立金方式」で行う場合の処理パターンを整理します。
(法定実効税率を40%とします)

圧縮記帳対象額について、
対象額の40%相当額の繰延税金負債の計上と
対象額の60%相当額の圧縮積立金の計上。

減価償却差額について、
差額の40%相当額の繰延税金負債の取崩と、
差額の60%相当額の圧縮積立金の取崩。

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「積立金方式」の圧縮記帳は、これでばっちりです。

では。

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【編集後記】

二日間、家を離れていたので、
昨日は早めに出勤して早めに帰宅。
息子とたっぷり遊びました。
「そんなのできるようになったんや」
という驚きの連続でした(^-^)

【昨日の一日一新】

KAGOME トマトジュース

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石田 修朗

1976年生まれ。B型。姫路出身。 (雇わず、雇われずの)“ひとり税理士”として活動中。テニスとカレーを愛する、二児の父です。経営者の不安を安心に変えることにこだわっており、脱力することと手を抜くことのちがいを意識しています。