今週は、任意積立金の存在意義について考えてみましょう。

P 20150524 111101

任意積立金ってなんのためにある?

資産や負債の増減取引と比べ、純資産の各項目の増減、
とくに「利益剰余金」に区分される“〇〇積立金”を
積み立てたり、取り崩したり、というのは
実態をイメージすることが難しくて困ります。

積立の際も、取崩の際も、相手科目は
必ず“繰越利益剰余金”勘定です。
ものがまったく動かないため、いまいちよくイメージが掴めません。

スクリーンショット 2015 06 11 14 22 25

そんなもやもやの解決にお役立ちできれば幸いです。

任意積立金の積立

任意積立金を積み立てることには、どのような意味があるのでしょうか?

任意積立金を積み立てると、貸借対照表はこのように変化します。

スクリーンショット 2015 06 11 14 27 57

このことが持つ意味とはなんでしょうか?

それは、配当財源からの脱出です。

繰越利益剰余金は、過去から現在までに蓄積された利益のうち、
未だ配当等の流出が行われていないものを指します。

通常、株式会社から株主(オーナー)への配当は
この繰越利益剰余金の範囲内で行われます。

任意積立金を積み立てることで、繰越利益剰余金から
“〇〇積立金”に金額が振り替わり、配当等の財源を
減らす狙いがあります。

ただし、これによって会社の財産の一部がどこかに隠されたりと
いうような財産状態の変化が生じるわけではありません。

繰越利益剰余金の任意積立金も、利益の蓄積である
「その他利益剰余金」であることに変わりはありません。

では、両者の違いは一体なんでしょうか?

それは、「株主との約束」です。

株式会社は、利益が出れば、当然オーナーである株主に
配当として還元します。

しかし、毎年毎年、稼いだお金をめいっぱい株主に配当として
還元すると、いつまでたってもお金が貯まりません。

スクリーンショット 2015 06 11 14 59 05

たとえば、いつかは自社ビルを建てようと思っていても、
めいっぱい出し続けていたら、その財源が貯まりません。

そこで、株主に提案します。

「わが社の安定的、かつ、発展的な経営に本社ビルは必要です。
つきましては、毎年の利益の一部を配当に回さずに社内にプールして
本社ビル建設の財源に充てさせていただきたい。
いかがでしょうか?」

これに対して株主が

「わかりました。そういうことなら、利益の一部は
社内にプールしてもらってけっこうです」

こうして、本来配当に回すべき財源の一部を
社内にプールすることとなります。

となれば、その話し合いの記録をしなければなりません。

そのプールする金額を繰越利益剰余金のまま放置しておくと、
新しく株主になった人はその貯まった金額をみて
「配当を出すように」主張する可能性があります。

そこで、繰越利益剰余金のまま置いておかずに
別の科目に振り替える必要があり、その科目が
“〇〇積立金”(この場合は新築積立金)です。

スクリーンショット 2015 06 11 15 24 32

つまり、こういったやりとりの経緯を示すものとして、
任意積立金を積み立てるのです。

ですから、任意積立金の積立は、株主総会の決議事項となっています。

スクリーンショット 2015 06 11 14 52 47

つまり、こういうことになります。

スクリーンショット 2015 06 11 14 57 13

任意積立金の取崩

一方で、任意積立金の取崩しについてはどうでしょうか?

任意積立金を取り崩すと、貸借対照表はこのように変化します。

スクリーンショット 2015 06 11 15 01 22

このことが持つ意味とはなんでしょうか?

それは、配当財源への帰還です。

例えば、ある目的達成のためにプールされた利益について、
その目的が達成できた場合には、もう利益の使途を拘束する
必要はありませんので、元の科目に戻してあげます。

この場合、もともと株主総会で承認を受けていた目的どおりに
使ったわけですから、株主総会の決議は不要です。

しかし、ある目的達成のためにプールされた利益について、
その目的を達成するためでなく、(計画断念や、配当財源の
補てんなどの)別の目的で繰越利益剰余金に戻すこともあります。

この場合は、もともと株主総会で承認を受けていた目的とは
別の目的で使用することになりますので、その取崩について
あらためて株主総会で承認を受ける必要があります。
したがって、目的外取崩しは、株主総会の決議事項です。

スクリーンショット 2015 06 11 15 10 37

具体的には、次のようになります。

<目的取崩し>

スクリーンショット 2015 06 11 15 11 34

<目的外取崩し>

スクリーンショット 2015 06 11 15 11 44

当期に十分な利益を稼げていない場合には配当をゼロにするか、
過去の利益を源泉として配当を出すことになります。

前者であれば、経営者はゼロ配当の通知をした時点で
株主から厳しい評価を受けます。

後者の場合において、もし任意積立金を取り崩して
配当の財源にしようとする場合には、
株主総会の決議を受ける必要があります。
ここで、その経営責任について追及されることになります。

スクリーンショット 2015 06 11 15 43 37

まとめ

任意積立金をなぜ積み立てるのか?

その意図は二つあります。

一つは、その使い途を明確に記録すること、です。

そして、もう一つは、利益の使い途を明確に記録することで、
毎年の経営者の経営責任を明らかにすること、です。

このように考えれば、両者ともに理論上の留保利益であり、
会社法上の分配可能原資である「その他利益剰余金」で
あるにもかかわらず、わざわざ株主総会の決議を経て
科目の振り替えを行う意味が見えてくるのではないでしょうか。

<関連記事>

税理士試験攻略。P/L当期純利益とB/S繰越利益剰余金 | 歩々是道場 〜脱力系税理士のblog〜

税理士試験攻略。〜圧縮記帳(積立金方式)について〜 | 歩々是道場 〜脱力系税理士のblog〜

==============================

【編集後記】

夏休み計画を練っています。
リスクとの調整が難しい・・・。

【昨日の一日一新】

バックハンド オープンフェイス

==============================

The following two tabs change content below.

石田 修朗

1976年生まれ。B型。姫路出身。 (雇わず、雇われずの)“ひとり税理士”として活動中。テニスとカレーを愛する、二児の父です。経営者の不安を安心に変えることにこだわっており、脱力することと手を抜くことのちがいを意識しています。