12月決算の事業者の方は、そろそろ来年の事業予測を立てましょう。
利益率には、いくつかの種類があります
経営指標といわれるものはたくさんありますが、
イメージしやすいものは“利益率”ではないでしょうか。
一口に“利益率”といっても、その種類は複数あります。
主だったところは次のとおりです。
一般的に注目されるのは、売上高利益率と売上高経常利益率でしょう。
売上高利益率は、売上高に対する最終利益の割合です。
計算要素を図で表すとこのようになります。
一方、売上高経常利益率は、売上高に対する経常利益の割合です。
経常利益とは、通常の事業活動によって稼いだ利益のことです。
土地を売却した儲けなど臨時的要素の強いものは計算要素に含まれなせん。
法人であれば、5%を目指したいところです。
計算要素を図で表すとこのようになります。
未来を予測する際には、経常利益率は役に立たない!
上で紹介した利益率は、その事業の現状を把握するためには
非常に有効な数字です。
しかし、その事業の未来を予測するにあたっては、
その使い方に注意する必要があります。
例えば、「5年後に売上高経常利益率を5%にする」というように、
目標設定の対象として使う分には有効です。
しかし、「我が社は現在、売上高経常利益率が3%だから、
利益をあと300万円稼ぐには1億円の売上げ増が必要だ」と
いうのは間違いです。
なぜなら、経費には「変動費」と「固定費」があるからです。
「変動費」とは、売上原価に代表されるもので、
売上げが増えるにつれて増加する経費のことです。
「固定費」とは、家賃や給料に代表されるもので、
売上げが増えたとしても増加しない、
一定額にとどまる経費のことです。
(借入金がある場合、金利もここに該当します)
両者を合わせて図に示すと、このようになります。
通常、販売費及び一般管理費に含まれる経費は、
そのほとんどが固定費となるため、売上げの増減に
左右されるものではありません。
事業運営上、一定額として必要な経費です。
つまり、「固定費」である販売費及び一般管理費は、
売上げが増えても増加することはないため、
売上げがある一定のラインを超えれば、
あとは「変動費」(売上原価)を超える部分が
まるまる事業の利益になるのです。
未来予測に使う指標は、“売上高総利益率”
その超えるべき一定のラインをどう判断するか、
それには「固定費」が毎年いくらかかっているかを
知る必要があります。
この「固定費」を“売上高総利益率”で割り算することで、
「固定費」を賄うために必要な売上高が算出されます。
(いわゆる、『損益分岐点』です)
そして、この分岐点を超えたら、あとは総利益分だけ
その事業には利益が残ることとなります。
売上高総利益率は、売上高に対する売上総利益の割合です。
粗利率、と呼ばれることもあります。
計算要素を図で表すとこのようになります。
ここに、二つの事業例を紹介します。
①の売上高だと、固定費も支払えません。
②の売上高だと、固定費は支払えますが、赤字です。
③の売上高で、ようやく黒字となります。
あとは、売上げが増えた分だけ、売上総利益が
事業利益に加算されていきます。
①の売上高はもちろん、②や③の売上高でも
まだ事業は赤字状態です。
まずは損益分岐点の突破を急ぎましょう。
この図を見比べていただくと、損益分岐点を突破したあと、
赤字を脱却するまでにどれくらいの売上が必要か、は
その事業の売上総利益率が影響してきます。
売上総利益率が高い事業は、早々に黒字化できますが、
売上総利益率の低い事業は、なかなか黒字化できません。
営業担当者が、勝手な判断で安易な値引きに応じたりすると、
この売上総利益率が圧迫され、売上は上がっても利益が残らない、
肥満体質の会社になってしまいます。
たくさんの営業担当者を抱える事業においては、
個々の営業担当者にこの数字の仕組みをきちんと
理解していただく必要があります。
そして、事業の未来を予測し、目標を設定する際には、
①いくらの売上げで、損益分岐点を突破するのか
②いくらの売上げで、黒字化するのか
③いくらの売上げで、目標達成するだけの利益を確保できるのか
この3点を意識して、予測・設定する必要があります。
自分と従業員の家族にゆとりある生活を送らせたい、
3年以内に2店舗目を出したい、
5年後に海外進出したい、
10年後にリタイアしたい、
事業者の皆さんには、それぞれ様々な目標があると思います。
それを実現に近づける第一歩、それは目標を達成できる計画を作ることです。
時代の変化に対応しつつ、しっかりと目標を達成していくために、
決算が近づいた際には、時間を取って、来期からの経営計画を
立てられてみてはいかがでしょう。
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【編集後記】
先週は、錦織選手の快進撃に
日本中が沸きましたね。
その効果で、ジュニア用のラケットや
テニスシューズが品切れという
テニスショップが多いみたいです。
確実にブーム到来していますね。
テニススクールはうれしいだろうなぁ。
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石田 修朗
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