法人が自社役員に資産を贈与した場合の消費税法での取扱いについて、です。

消費税のみなし譲渡

消費税法では、

事業として対価を得て行われた資産の譲渡とみなす」

として、一定の行為については
実際の対価はないにもかかわらず
対価性のある取引として認識することを
強制する規定があります。

それが『みなし譲渡』です。

具体的には

個人事業者の家事消費
法人の自社役員に対する資産の贈与

がそれに該当します。

これらの行為は対価の授受がありませんが、
それがあったものとして課税の対象と
なるかどうかの判定を行います。

ここでは、法人が自社の役員に
絵画(応接間に飾ってあったもの)を贈与した場合

自社が販売する商品を贈与した場合
の2つのケースについて検討していきます。

みなし譲渡の課税標準

課税標準とは

消費税における課税標準は

税抜対価の額

です。

つまり、受領した金額を税抜きしたものが
課税標準となります。

ちなみに、この場合の対価の額とは
金銭以外にも、物、権利、その他経済的な利益
を含むものとされています。

ここで“みなし譲渡”を思い出してみると
たしかに「対価を得て行われた資産の譲渡」と
みなすわけですが、肝心の対価が存在しません。

この場合、課税標準はどう決定するのでしょうか?

棚卸資産以外の場合、と棚卸資産の場合、にわけて
決定していくことになります。

課税標準(棚卸資産以外)

これはもう単純なケースでして、

課税標準は、その資産の贈与時の価額、
すなわち「時価」です。

上述の例でいうと、
自社役員に贈与した絵画の時価相当額を
課税標準額の算定計算に含めてください。

課税標準(棚卸資産)

消費税法では上記例と同じく
その資産の贈与時の価額、
すなわち「時価」とされています。

ただし、棚卸資産については
<基本通達10−1-18>で

(1)棚卸資産の課税仕入れの金額
(2)通常他に販売する価額のおおむね50%に相当する金額
のいずれか大きい方をその対価とする場合にはこれを認める

とされています。

そこで、棚卸資産についてのみなし譲渡では

(1)棚卸資産の仕入価額
(2)売価の50%相当額
のいずれか大きい金額

をもって対価の額とすることになります。

このケースのわたしのアプローチは

① 基本は売価の50%相当額
② ただし、仕入価額の方が大きいとこの取引で還付が生じる
③ それは認めがたい
④ なので、売価の50%相当額よりも仕入価額の方が大きい場合は後者
⑤ これでこの取引から還付が生じることはない

と理解しています。

まとめ

したがって、問題を解くときにアプローチですが、

① 棚卸資産以外の資産の場合には「与えられた贈与時の時価」
② 棚卸資産の場合には「売価の50%相当額(仕入価額の方が大きければ仕入価額」

と理解して対応しています。

最後に

法人が自社役員に対して著しく低い価額で資産を譲渡する
“低額譲渡”の判定とごっちゃになりやすいので注意しましょう。

“低額譲渡”の場合には、
それに該当するかどうかの判定(ジャッジ)が必要で
その結果該当することになったら、
課税標準に算入すべき額は
棚卸資産かどうかにかかわらず「時価」です。

9月期最初の関門です。
トレーニングを反復練習して
得意論点にしてやりましょう。

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【編集後記】
空がめっきり秋模様になってきましたね。
竹田城が賑わう時節までもう待ったなし。
今年は久しぶりに立雲峡から眺める予定です。

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❐石田修朗税理士事務所HP

石田修朗税理士事務所[姫路]

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石田 修朗

1976年生まれ。B型。姫路出身。 (雇わず、雇われずの)“ひとり税理士”として活動中。テニスとカレーを愛する、二児の父です。経営者の不安を安心に変えることにこだわっており、脱力することと手を抜くことのちがいを意識しています。