一般社団法人について、その特徴を探る全2回の連載ものです。
前回からの続き“一般社団法人”
法人を設立するに際して、株式会社ではなく、
“一般社団法人”という組織を設立することもできます
今回も、株式会社との違いを比較しながら、その特徴を探ります。
前回のブログはこちら
設立時のヒトについて
株式会社では、発起人は1人いればOKですが、
一般社団法人では、発起人は2人以上必要となります。
株式会社の発起人は、設立時の株主という立場になるため、
最低1円以上の払込が必要となります。
これに対して、一般社団法人の発起人は、設立時の「社員」と
いう立場になります。
これは、世間一般でいう「従業員」という意味ではありません。
一般社団法人の「社員」とは、「社員総会」において議案を提出したり、
その議決に参加し、議決権を行使する者のことをいいます。
この「社員」という立場になるあたり、資金払い込みの必要はありません。
そして、この「社員」には、法人や団体がなることもできます。
設立時のカネについて
株式会社の場合、設立時に株主となる発起人から
一定金額の拠出を受けることになります。
これが法人の設立時の活動資金となります。
一方、一般社団法人の場合、設立時に社員となる発起人から
一定金額の拠出を受けることが約束されていません。
つまり、発起人が一定額の拠出をする義務はありません。
そうはいっても、運転資金は
資本に変わる資金調達制度として「基金」制度を採ることができます。
この「基金」は債務であり、返還義務がありますが、
基金拠出者に配当や利息を支払うことはできません。
この基金制度を採る場合、定款において予め一定の事項を
定めておく必要があります。
そして、この基金拠出と議決権数はいっさい関連がありません。
議決権及び議決について
株式会社の場合、基本的には出資割合によって議決権の多寡が決まります。
一般社団法人の場合、前述のとおり、基金の拠出に関係なく、
社員一人ひとりが議決権をそれぞれ一つずつ持つことになります。
このあたり、出したお金の多寡が声の大きさに反映される
株式会社とは異なりますので、注意が必要です。
ただし、これについては定款で差をつけることもできます。
また、重要事項を決定する最高意思決定機関が、
株式会社の場合は「株主総会」
一般社団法人の場合は「社員総会」です。
運営について
法人を運営する者のことを、株式会社では「役員」といい、
一般社団法人では「理事」といいます。
いずれも、最低1人を設置すればよいです。
もちろん、いずれの形態においても、役員報酬を
支給することができます。
株式会社において、取締役の集合体として
「取締役会」を設置することができます。
一般社団法人において、理事が2人以上いる場合には、
原則として、理事の過半数によって業務執行を決定します。
一般社団法人の場合において、理事が3人以上いるときは、
理事の集合体として「理事会」を設置することができます。
理事会を設置した場合、理事の中から代表者を選びますが、
理事会を設置しなかった場合、各理事がそれぞれ法人の
代表権を有することになります。
また、理事会を設置した場合には、
監事を設置する必要も出てきます。
税務上有利になる(かもしれない)「非営利型」の要件
前回のブログで紹介したように、一般社団法人には
「非営利型」と「それ以外」に分けることができます。
そして、両者における大きな違いは税制面での優遇の有無です。
「非営利型」となる場合には、その収益事業についてのみ
課税対象となり、寄付を受けたり会費を集めたりという部分は
課税されません。
「非営利型」になるためには、まず理事が3人以上必要です。
そして、理事全員のうちに占める、親族関係のある理事の数が
3分の1以下であることが求められます。
そして、ここから“非営利性が徹底された法人”と
“共益的活動を目的とする法人”の二つに分かれ、
いずれかに該当すれば「非営利型」となります。
<非営利性が徹底された法人>
<共益的活動を目的とする法人>
【特別の利益を与えたことになる可能性のある行為の例示】
①法人が特定の個人又は団体に対して土地等の資産を無償又は通常よりも低い賃貸料で貸し付け
②法人が特定の個人又は団体に対して無利息又は通常よりも低い利率で金銭を貸し付け
③法人が特定の個人又は団体に対して資産を無償又は通常よりも低い対価で譲渡
④法人が特定の個人又は団体から通常よりも高い賃借料により土地等の資産を賃借
⑤法人が特定の個人又は団体から通常よりも高い利率により金銭を借り受け
⑥法人が特定の個人又は団体の所有する資産を通常よりも高い対価で譲り受け
⑦法人が特定の個人に対し、過大な給与等を支給
これらの要件をクリアした場合には、その行う事業が
収益事業に該当しないものであれば、課税されません。
収益事業は以下のとおり34項目が列挙されています。
“一般社団法人”設立への適正
法人を設立する際に、(株式会社でなく)一般社団法人を
設立するメリットとしては、
・社会的なイメージがなんとなくいい
・設立コストが安く済む
・税務上の優遇を受けることができる“可能性”がある
これらがあります。
上述のとおり、“一般社団法人”においては
理事会を設置しなければ、理事全員が
法人の代表権を持つことになりますし、
定款で明文化しなければ、社員全員が
等しく議決権を持つ可能性もあります。
一人理事にして、親族で社員を構成すれば、
業務執行上の不一致を防ぐことができ、
一人が率いる形式での法人運営が可能ですが、
税務上の優遇は受けることができません。
税務上の優遇を受けるためには、
最低3人以上の理事が必要だからです。
つまり、一人が率いる形式の法人を一般社団法人として
設立する場合には税務上のメリットが生じません。
法人設立コストの軽減には有効です。
また、税務上の優遇を受けるためには、
業務執行の意思決定を行う理事に
親族以外から就任してもらう必要があり、
さらにその他人比率も3分の2以上であり、
実質的にワンマン運営が難しくなります。
そして、それらをクリアしても、
収益目的の事業に該当すれば、
通常どおり課税されます。
そういった意味で、非課税への道は
決して平坦なものではありません。
そして、社会的にイメージがいい、という点ですが、
これもとくに社会貢献性の高い事業内容でない場合に
容易に一般社団法人を冠することがイメージ戦略として
正解かどうか、難しいところがあります。
事業内容が営利目的で、社会貢献性が感じられない
事業であった場合、世間からの社団法人というフレーズの
イメージに合わず、違和感を感じられるおそれもあります。
例えば、「産地直送」って書いているのに、
特に新鮮でない食材を使っている料理屋は、
別にうそをついているわけではなくても
消費者は裏切られた感を持ちますよね?
わざわざ「産地直送」と書いたことで、
負のイメージがより強く残ります。
そういったことが起きないとは限りません。
(冒頭の写真はお客様の料理店でいただいた鮪のタルタル。
産地直送の冠を凌駕する逸品でした)
これらを十分に検討したうえで、
その設立形態を選ぶことが必要です。
一概には言えませんが、
・ワンマンでぐいぐい事業を引っ張っていきたい。
・自己責任で稼いだものは自分にきちんと還元したい。
・事業内容の中に社会貢献の要素が少ない。
・ヒトを心底信頼することができない。
こういった方には、税務上の優遇目的での
一般社団法人の設立は合わないように感じます。
税金は社会への還元であり、ムダではありません。
(不必要に多く納税することは避けたいですが・・・)
大切なのはご自身の事業の方向性です。
この点を見失わないようにすることが大切でしょう。
では。
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【編集後記】
スマートテニスセンサーによると、
昨日の朝練では748球を打ったことになっています。
(ときどきカウントされないことがあるため、
本当はもう少し打っている可能性が高いです)
プレイ時間で割ると、1分あたり7.4球です。
消費カロリーは723キロカロリー。
数値化されるとメモしたくなりますね。
【昨日の一日一新】
クラフトアートフェア
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石田 修朗
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