将来に向けての積み立て、そして節税・・・。

個人事業者の心強い味方「小規模企業共済」

10月も終盤に差し迫ってきました。
個人事業を営まれている方にとっては、そろそろ
今年の税額が気になる頃ではないでしょうか。

税金を合法的に減らす方法を節税方法と言います。
個人事業者にとって非常に効果的な節税方法として
「小規模企業共済制度」があります。
(会社役員の方でも加入できる場合があります)

今年の税額が気になる方で、未だ加入されていない方は
ぜひ加入をご検討ください。

「小規模企業共済制度」とは、個人事業主や会社の役員の方が
事業を辞めたり、退職した場合に生活の安定や事業の再建を
図るための資金をあらかじめ準備しておく共済制度で、
いわば「経営者の退職金制度」です。

この制度は小規模企業共済法という法律に基づく制度で、
国が全額出資している独立行政法人中小企業基盤整備機構が
運営しています。
契約者の方からお預かりしている掛金とその運用収入は、
すべて契約者に還元される仕組みで、制度の運営経費は
全額国からの交付金によって賄われています。

この制度には加入制限があります。
① 常時使用する従業員が20人以下(商業・サービス業では
  5人以下)の個人事業主及び会社の役員
② 常時使用する従業員が5人以下の弁護士法人、
  税理士法人等の士業法人の社員
③ 小規模企業者たる個人事業主に属する共同経営者

小規模な事業を運営する事業者のための退職金積立制度です。

この制度を利用するとなぜ節税効果が発揮されるのでしょう。

それは「毎月(毎年)の掛金が所得控除の対象となる」からです。

実際に計算して比較してみました

ここで実際に税額を計算した比較表があります。
個人事業者で、年間事業所得(もうけ)が800万の方の場合です。
左側が未加入の場合、右側が加入して年間60万円支払った場合です。

このように、所得税・復興特別所得税と住民税で
合計182,500円もの差が出てきます。

「600,000円支払ったのに、182,500円しか税金が
少なくならないならやらない方がいいんじゃないの?」

いいえ、そうではありません。
この共済制度は、上述のように「経営者の退職金制度」です。
掛金は、共済制度の下で積み立てられているのです。

つまり、“お金を貯めながら、節税できる”という優れものです。

積み立てた資金を受取る際の取り扱いが優遇されています

たとえば、毎年60万円ずつ掛金を支払うとします。
すると、毎年一定の節税効果が得られます。

そして、この外部に積み立てられた資金を受取る場合には
次のようなことが起こります。

資金を受取る際の理由によって、税務上の取り扱いが異なります。
いずれも課税対象にはなりますが、
(1)や(2)の場合には、その受取ったお金は退職金として、
(3)の場合には、その受取ったお金は解約金として、それぞれ
「退職所得」「一時所得」という収入として課税対象となります。

つまり、あとでお金を受取る際に、税金が課税されるのです。

ただ、この場合の「退職所得」「一時所得」という取り扱いは
とても有利な取り扱いで、その税額は通常の所得(収入)の
半分以下で済みます。

【追加でおことわり】
一時所得の場合には、掛金支払期間に所得を分散して試算すると
必ずしも有利なケースばかりとはいえません。

具体的に計算してみると、以下のようになります。

つまり、毎年18万円程度の節税を繰り返すこの事例で、
一番不利な“解約”という形での資金の受取りで納める税金は
142,500円です。(他に所得がないと仮定しています)
事業を廃止した場合には、82,800円の納税です。

毎年同程度の事業所得(もうけ)があると仮定した場合、
5年間通算で考えますと、

任意で解約した場合(法人成りはした場合を含む)には、
3,000,000円支払って、税負担が912,500円軽減され、
2,400,000円戻ってきて、142,500円納税する。
毎年600,000円積み立てて、5年間で170,000円の
利息が付いたともいえます。5年で5.6%の運用です。

事業を廃止した場合には、
3,000,000円支払って、税負担が912,500円軽減され、
3,107,000円戻ってきて、82,800円納税する。
この場合ですと、毎年600,000円積み立てて、5年間で
936,700円の利息が付いたとも言えます。
5年で31.22%の運用はなかなかないですね。

事業所得が高額になってくると、この効果も大きくなります。
逆に、事業所得が少額になりますと、この効果は小さくなります。
それは、我が国の個人所得税制が累進課税制度を採用しているからです。

平成26年はこのようになっています。

平成27年以降はこのようになります。

小規模企業共済制度に加入するということは、
掛金が所得控除の対象ですので、このグラフの
横軸を右から左にシフトすることになります。

平成27年以降のモデルだと、このようなイメージです。

ですので、所得(もうけ)の多い方の方が、節税効果が大きくなります。

もちろん、この掛金によって本業が圧迫されるようでは本末転倒です。
本業に影響を及ぼさない範囲で利用できれば、将来の安心につながり、
そして、毎年の節税効果も期待できます。

個人事業を営まれている方で未加入の方は、一度お近くの
税理士にご相談されることをお勧めします!

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【編集後記】

各保険会社から、控除証明が
送られてきていますね。
年末調整シーズンの開幕です。

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石田 修朗

1976年生まれ。B型。姫路出身。 (雇わず、雇われずの)“ひとり税理士”として活動中。テニスとカレーを愛する、二児の父です。経営者の不安を安心に変えることにこだわっており、脱力することと手を抜くことのちがいを意識しています。