建設業会計について、シリーズで確認していきます。


(UrbanPicnic@東遊園地)

売上と原価のタイミング、とは

建設業を営む事業者の経理処理において意識したいこととして、
“売上と原価のタイミングを合わせる”ということがあります。

どういうことかというと、毎月の試算表では、
その月の売上計上額が利益算定のプラス要素として、
その月の原価計上額が利益算定のマイナス要素として、
記載され、利益が算定されます。

つまり、6月2日に完成工事高800、
工事原価600と処理をすれば、
6月の試算表の完成工事高の中には800が、
工事原価の中には600が計上され、
その差額の200が利益として算出されます。

これを、5月26日に工事原価600と処理し、
6月2日に完成工事高800と処理をすれば、
5月の試算表の完成工事高には
800が計上されませんが、
工事原価には600が計上され、
その結果、0から600を引いた
△600が利益に取り込まれます。

逆に6月の試算表の完成工事高には
800が計上されますが、
工事原価には600が計上されないため、
800から0を引いた800が
利益に取り込まれます。

前者と後者のどちらが会社の状態を把握する上で
優れているか、は明らかですよね。

ところが、建設業を営む事業者においては、
しばしば後者のスタイルが採られています。

売上と原価のタイミングを一致させる上で大切なのは、
完成工事高ではなく工事原価の処理方法です。
工事原価の取り扱いに、一致の成否がかかってきます。

次のような事例を基に考えていきましょう。

売上と原価のタイミングが一致する方法

一致させるためには、原価の発生したタイミングで
原価として計上しないことが大切です。

具体的には、いったん棚卸資産として処理します。

そして、完成工事高を計上する段階
(工事が完成して引渡をした段階)で
その棚卸資産を工事原価に振り替えます。

こうすれば、完成工事高と工事原価のタイミングが一致します。

その結果、以下のようなメリットを得ることができます。

売上と原価のタイミングが一致しない方法

売上と原価が一致しない原因は、原価が発生したタイミングで、
原価として計上してしまうことです。

具体的には、いきなり工事原価として処理します。

このように処理すると、以下のような仕訳の流れになります。

このように処理すると、売上と原価のタイミングが一致しません。

その結果、以下のようなデメリットが生じます。

まとめ

会計処理の結果を経営情報として活用するためには、
前者の方法を選択すべきです。

しかし、前者はその処理が煩雑になります。

会計ソフトの操作性はあまりよくないことが多いですので、
経理担当者の会計実務能力が高くない場合には
このような処理を行うことは難しいでしょう。

ただし、その場合にも悲観する必要はありません。

エクセルなどの表計算ソフトで補足資料を作成し、
工事ごとの利益と完成時期を把握することで
おおむねの利益の計算は可能になります。

別途資料を作成するので手間は増えますが、
会計ソフトよりもエクセルの方が操作性が高く、
一般的に身近に感じられる方も多いと思います。

絶対に前者を採るべき、ということではなく、
事業者の経理環境も考慮しつつ、タイムリーに
利益を把握できる方法を構築しましょう。

では。

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【編集後記】

6月1日から、三宮の東遊園地でUrbanPicnicという
試みが行われています。
公園を市民の交流の拠点とすべく、
公園の中に図書館を作るアウトドアライブラリーと
生産者と消費者をつなぐファーマーズマーケットの
2つのプログラムを開催しています。
カフェも併設し、期間は6月14日までです。

【昨日の一日一新】

ネスカフェで打ち合わせ

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石田 修朗

1976年生まれ。B型。姫路出身。 (雇わず、雇われずの)“ひとり税理士”として活動中。テニスとカレーを愛する、二児の父です。経営者の不安を安心に変えることにこだわっており、脱力することと手を抜くことのちがいを意識しています。