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これはカレー店開業を決意したオトコの軌跡である。
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目次
前回までのおさらい
彼の名前は苅田玖珉(カルダクミン)。
学生時代になんとなく参加した
海外ボランティア活動で訪れた
スリランカで出会ったカレーに
魅了されたオトコである。
<第一章 開業決意までの日々>
カレー店開業記 〜第一章 開業決意までの日々〜 | 歩々是道場 〜脱力系税理士のblog〜
<第二章 経営理念の策定>
カレー店開業記 〜第二章 経営理念の策定〜 | 歩々是道場 〜脱力系税理士のblog〜
<第三章 店舗コンセプトの決定>
カレー店開業記 〜第三章 店舗コンセプトの決定〜 | 歩々是道場 〜脱力系税理士のblog〜
<第四章 物件を即決>
カレー店開業記 〜第四章 物件を即決〜 | 歩々是道場 〜脱力系税理士のblog〜
<第五章 融資の相談へ公庫に行くも、、、>
カレー店開業記 〜第五章 融資の相談へ公庫に行くも、、、〜 | 歩々是道場 〜脱力系税理士のblog〜
税理士事務所へ足を運ぶ
苅田は神戸のある港の近くにある
税理士事務所に足を運んだ。
ドアをノックすると、いつも
カウンターで与太話をしている
税理士さんが出てきた。
よく顔を合わせているとはいえ、
別の場所で会うと少しこそばい
感じがするものである。
さっそく、カレー店開業に向けて
準備していることを伝え、進捗状況として、
①経営理念と店のコンセプト
②駅から徒歩5分のビルのテナントを仮押さえしていること
③公庫に融資の説明を聞きに行ったこと
④自己資金として300万円があること
⑤そのうち200万円は親が貯めてくれていたものであること
こういったことを伝えると、
税理士さんは複雑な表情を浮かべた。
そして、「今聞いたお話を基に
少し話をさせていただいても
いいですか?」と切り出された。
税理士からのアドバイス
「まず、経営理念や店のコンセプトが
固まっている点が非常に素晴らしいですね」
「商売として成り立つかどうか、
これは1,200円を超える満足を
お客さんに与えることができるかに
かかっているでしょう」
「むしろ、安売りする方が危険です。
運営と生活に必要なお金を稼がないと
商売は成り立ちませんよね。
売上高は、“単価×数量”で決まります。
飲食店でいえば、“客単価×来客数”です。
単価を下げてしまうと、その分
来客数を増やさなければ、
必要金額を稼ぐことができません。
しかし、ひとりで運営するスタイルだと
対応できる客数は限られているでしょう。
それなら、高単価でやるのが賢明です」
「カレーの味の面での満足度だけでなく、
まず最初に一回食べてもらうきっかけにも
こだわりをもって考えていきましょう。
SNSの活用は不可欠でしょうね」
「大切なことは世の中にある1,200円で
得られるものやサービスを知ることです」
「苅田さんの競合相手はカレー店だけではありません。
お客さんは財布の中から1,200円を出すのですが、
その1,200円はカレー以外のものにも使えますよね?」
「自らが1,200円の食事を提供するのであれば、
1,200円のランチはもちろん、1,200円のケーキや
1,200円のマッサージ、1,200円のタクシー代、
1,200円の雑貨や文房具、1,200円では入れる
動物園や水族館、テーマパークなど、
こういったものすべてをライバルとして
これら以上の価値を提供することを
常に意識していきましょう」
なるほど、たしかに納得である。
いつもはカウンターで、散々だったコンパの話や
テニス談義、お酒での失敗談しか聞かないが、
やはり、相談すべきはプロである。
苅田の考えの正当性を指摘してくれただけでなく、
姿勢についてまったく気づいていなかったことを
次々と指摘してもらえた。
税理士さんから指摘された問題点
「ただ、クリアすべき問題点がいくつかあります」
「それは“お金と経験”です」
「自己資金300万あれば、融資と併せると
900万円くらいの元手を基にスタートできます。
が、苅田さんのおっしゃられている300万円のうち、
実際に公庫から見た自己資金は100万円です。
200万円は自分で貯めたものではないですよね?」
「現状だと融資額はかなり少なくなる可能性が高いです」
「そして、飲食店運営に関する経験がないことも
融資においては相当なマイナス要因です」
「要は、飲食経験もなく、開業のために計画的に
資金を貯めてきたわけでもないという人に
誰もお金を貸そうと思わないということです」
この指摘は苅田にかなり重いパンチとなった。
けっこうキツい言い方をされたがそのとおりである。
税理士さんが見せてくれたちがう景色
ここから、話は思わぬ方向に進むことになる。
「あと、ここからは選択肢としての話なんですが・・・」
「苅田さん、お店を構えるのはもう少し時間を
置いてからということは選択肢としてアリですか?」
なぜだろう?苅田はその理由が知りたくて聞いた。
「それは、2つの側面から考えた結果の選択肢です。
ズバリ、先ほどネックだと言った“お金と経験”です」
さらなる貯蓄を
「今現在の苅田さんのポジションはサラリーマンです」
「ある程度決まった収入が保障されています」
「この中からもう少し貯蓄に回す額を増やすことで
時間が経てば、自己資金が増え、公庫からの信頼も
高まることでしょう」
「そして、この立場のままで飲食店業務の経験を
積むことができれば、いうことなし、ですよね?」
そりゃ、そうなれば願ったり叶ったりだ。
そんなうまい話ってあるのか?
経験値を稼ぐ
「苅田さんが現在お勤めの会社は、
週末起業とかって禁止ですか?」
苅田の務める富松物産株式会社では、
とくに副業禁止規定は設けていない。
「それならよかった。
今、大阪の方に多いスタイルで
“宿借り”ってありますよね?
居酒屋さんの開店前のランチタイムを
間借りして昼間だけ営業みたいな。
あれと同じ要領で“日曜日だけ営業”の
カレー店をやりませんか?」
「ビジネス街にある飲食店は
だいたい日曜日が定休日ですよね?
そこを間借りして、週イチで開店するという
スタイルのカレー店をやってみませんか?」
「これをしていたら、上手くいけば
貯蓄の足しになるかもしれないですし、
トントンだったとしても、飲食店運営の
実経験を積むことだってできます」
「自分の店を構えるまでに時間ができると
いうことは、さらに研究を続けることが
できるということにもなりますし」
「カレー店開業を決意してから、
毎週日曜日に間借りでカレー店を
経営し、貯蓄と経験を積んだ人ってなると、
公庫からの評価もきっと変わりますよ」
「そしてなにより、生活の保障がある中で
焦らずにそうした経験を積むことができて
自分の店を構えるときには、すでにファンが
ついている状態にできる可能性だってあります」
退路を断つ必要はないのでは
「会社を辞めて店を構えて、“あれ?
やっぱりこれはちがうな、”と思っても、
会社には戻れないでしょう。
いそいで辞める必要はないのでは?」
ごもっともな意見である。
苅田には、その発想はなかった。
これによるメリットとしては
①自分自身の経験値を上げる
②自己資金を貯める
③公庫からの評価を上げる
④生活に必要な収入も保障される
こういったところだろうか。
いい手である。
苅田は、不動産屋に支払った手付金の10万円を諦めることにした。
そして、間借りさせてもらえないかの交渉のために
ジリジリと夏の日差しが降り注ぐ中、大阪の
ビジネス街にある飲食店を訪問し始めたのである。
(続く)
※ この話はフィクションです。
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【編集後記】
フェデラーが全仏オープンの
欠場を発表しました。
個人的にはホッとしています。
万全の態勢でウィンブルドンに
臨んでほしいですので。
ただ、背中のケガということで
ウィンブルドンに間にあるのか
心配です。
【昨日の一日一新】
ピレーネ
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■ 石田修朗税理士事務所HP
開業支援・経営計画支援の石田修朗税理士事務所
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石田 修朗
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