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今週は、任意積立金の存在意義について考えてみましょう。
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目次
任意積立金ってなんのためにある?
資産や負債の増減取引と比べ、純資産の各項目の増減、
とくに「利益剰余金」に区分される“〇〇積立金”を
積み立てたり、取り崩したり、というのは
実態をイメージすることが難しくて困ります。
積立の際も、取崩の際も、相手科目は
必ず“繰越利益剰余金”勘定です。
ものがまったく動かないため、いまいちよくイメージが掴めません。
![スクリーンショット 2015-06-11 14.22.25.png スクリーンショット 2015 06 11 14 22 25](https://ishitax-blog.jp/wp-content/uploads/2015/06/c4849eeb45455c8210920a1eec57d7d8.png)
そんなもやもやの解決にお役立ちできれば幸いです。
任意積立金の積立
任意積立金を積み立てることには、どのような意味があるのでしょうか?
任意積立金を積み立てると、貸借対照表はこのように変化します。
![スクリーンショット 2015-06-11 14.27.57.png スクリーンショット 2015 06 11 14 27 57](https://ishitax-blog.jp/wp-content/uploads/2015/06/96fa24a35ee711fc6b1f237acc2eb4db.png)
このことが持つ意味とはなんでしょうか?
それは、配当財源からの脱出です。
繰越利益剰余金は、過去から現在までに蓄積された利益のうち、
未だ配当等の流出が行われていないものを指します。
通常、株式会社から株主(オーナー)への配当は
この繰越利益剰余金の範囲内で行われます。
任意積立金を積み立てることで、繰越利益剰余金から
“〇〇積立金”に金額が振り替わり、配当等の財源を
減らす狙いがあります。
ただし、これによって会社の財産の一部がどこかに隠されたりと
いうような財産状態の変化が生じるわけではありません。
繰越利益剰余金の任意積立金も、利益の蓄積である
「その他利益剰余金」であることに変わりはありません。
では、両者の違いは一体なんでしょうか?
それは、「株主との約束」です。
株式会社は、利益が出れば、当然オーナーである株主に
配当として還元します。
しかし、毎年毎年、稼いだお金をめいっぱい株主に配当として
還元すると、いつまでたってもお金が貯まりません。
![スクリーンショット 2015-06-11 14.59.05.png スクリーンショット 2015 06 11 14 59 05](https://ishitax-blog.jp/wp-content/uploads/2015/06/f1c4415fb5ab81df04bebc185e51ccc2.png)
たとえば、いつかは自社ビルを建てようと思っていても、
めいっぱい出し続けていたら、その財源が貯まりません。
そこで、株主に提案します。
「わが社の安定的、かつ、発展的な経営に本社ビルは必要です。
つきましては、毎年の利益の一部を配当に回さずに社内にプールして
本社ビル建設の財源に充てさせていただきたい。
いかがでしょうか?」
これに対して株主が
「わかりました。そういうことなら、利益の一部は
社内にプールしてもらってけっこうです」
こうして、本来配当に回すべき財源の一部を
社内にプールすることとなります。
となれば、その話し合いの記録をしなければなりません。
そのプールする金額を繰越利益剰余金のまま放置しておくと、
新しく株主になった人はその貯まった金額をみて
「配当を出すように」主張する可能性があります。
そこで、繰越利益剰余金のまま置いておかずに
別の科目に振り替える必要があり、その科目が
“〇〇積立金”(この場合は新築積立金)です。
![スクリーンショット 2015-06-11 15.24.32.png スクリーンショット 2015 06 11 15 24 32](https://ishitax-blog.jp/wp-content/uploads/2015/06/dd227c7053d3d664bc11e6a38fae21a3.png)
つまり、こういったやりとりの経緯を示すものとして、
任意積立金を積み立てるのです。
ですから、任意積立金の積立は、株主総会の決議事項となっています。
![スクリーンショット 2015-06-11 14.52.47.png スクリーンショット 2015 06 11 14 52 47](https://ishitax-blog.jp/wp-content/uploads/2015/06/e0e966175a4a5f5690266facfedabe23.png)
つまり、こういうことになります。
![スクリーンショット 2015-06-11 14.57.13.png スクリーンショット 2015 06 11 14 57 13](https://ishitax-blog.jp/wp-content/uploads/2015/06/e68e158bb7daa7ed6abd728288403279.png)
任意積立金の取崩
一方で、任意積立金の取崩しについてはどうでしょうか?
任意積立金を取り崩すと、貸借対照表はこのように変化します。
![スクリーンショット 2015-06-11 15.01.22.png スクリーンショット 2015 06 11 15 01 22](https://ishitax-blog.jp/wp-content/uploads/2015/06/74aa1818bd265c72cd7f7d40f5a85294.png)
このことが持つ意味とはなんでしょうか?
それは、配当財源への帰還です。
例えば、ある目的達成のためにプールされた利益について、
その目的が達成できた場合には、もう利益の使途を拘束する
必要はありませんので、元の科目に戻してあげます。
この場合、もともと株主総会で承認を受けていた目的どおりに
使ったわけですから、株主総会の決議は不要です。
しかし、ある目的達成のためにプールされた利益について、
その目的を達成するためでなく、(計画断念や、配当財源の
補てんなどの)別の目的で繰越利益剰余金に戻すこともあります。
この場合は、もともと株主総会で承認を受けていた目的とは
別の目的で使用することになりますので、その取崩について
あらためて株主総会で承認を受ける必要があります。
したがって、目的外取崩しは、株主総会の決議事項です。
![スクリーンショット 2015-06-11 15.10.37.png スクリーンショット 2015 06 11 15 10 37](https://ishitax-blog.jp/wp-content/uploads/2015/06/93ff92087b00ccdb57658d2e801a157e.png)
具体的には、次のようになります。
<目的取崩し>
![スクリーンショット 2015-06-11 15.11.34.png スクリーンショット 2015 06 11 15 11 34](https://ishitax-blog.jp/wp-content/uploads/2015/06/eb123d444591cd408afbf861d08dbb92.png)
<目的外取崩し>
![スクリーンショット 2015-06-11 15.11.44.png スクリーンショット 2015 06 11 15 11 44](https://ishitax-blog.jp/wp-content/uploads/2015/06/acba3f195f45e3502f6e36d060c109c4.png)
当期に十分な利益を稼げていない場合には配当をゼロにするか、
過去の利益を源泉として配当を出すことになります。
前者であれば、経営者はゼロ配当の通知をした時点で
株主から厳しい評価を受けます。
後者の場合において、もし任意積立金を取り崩して
配当の財源にしようとする場合には、
株主総会の決議を受ける必要があります。
ここで、その経営責任について追及されることになります。
![スクリーンショット 2015-06-11 15.43.37.png スクリーンショット 2015 06 11 15 43 37](https://ishitax-blog.jp/wp-content/uploads/2015/06/333343fc460ac905c376294c25efdb32.png)
まとめ
任意積立金をなぜ積み立てるのか?
その意図は二つあります。
一つは、その使い途を明確に記録すること、です。
そして、もう一つは、利益の使い途を明確に記録することで、
毎年の経営者の経営責任を明らかにすること、です。
このように考えれば、両者ともに理論上の留保利益であり、
会社法上の分配可能原資である「その他利益剰余金」で
あるにもかかわらず、わざわざ株主総会の決議を経て
科目の振り替えを行う意味が見えてくるのではないでしょうか。
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【編集後記】
夏休み計画を練っています。
リスクとの調整が難しい・・・。
【昨日の一日一新】
バックハンド オープンフェイス
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❐石田修朗税理士事務所HP
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石田 修朗
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