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木曜日は税理士受験シリーズ。今週も退職給付会計について、です。

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(神戸港に入港するクイーンエリザベス号、でっかいです)

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“退職給付債務”の増加要因

先週に引き続き、退職給付会計について。

今日は“退職給付債務”について考えていきましょう。

退職給付会計とは、「退職給付引当金」勘定を用いて
企業の従業員に対する将来の退職金支払義務を適正に
貸借対照表に負債として計上する制度です。

「退職給付引当金」はどのように計算されるかというと、
“退職給付債務”と“年金資産”の差額として計算されます。
直接的に計算するのではなく、あくまでも差額概念なんです。

第一の増加要因 “勤務費用”

“退職給付債務”とは、退職金について従業員に対する責任です。

確定給付型年金制度を採用している企業は、年金資産の運用の
いかんに関わらず、定められた額を支給する義務があります。
また、退職一時金制度を採用している企業は、従業員の退職時の
現況により、退職金規程に基づいて算定した退職一時金を
支給する義務があります。

これらの責任は、当然のことながら、従業員の働きによって
積み重なるように増えていきます。

これを毎年の積み重なりを“勤務費用”といいます。

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第二の増加要因 “利息費用”

また、退職までに相当の期間がある(まだまだ先)ため、
退職給付債務は割引計算を行います。

具体的には、既に働いた部分に相当する将来の退職金を見積もり、
それを今現在の価値まで割引計算します。

お金には時間価値があり、今の10,000円と2年後の10,000円は
等価ではないんでしたよね。
(今の10,000円は運用によって2年後は増えるので)

10年後に1,000万円の退職一時金の支払いが控えている場合、
今の段階で1,000万円を準備する必要はありません。

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運用の結果、10年後に1,000万円になる金額だけを
準備しておいたらいいのです。

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このときに行うのが、割引計算です。
何円後のいくら、をベースに現在価値を算出します。

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負債計上する際にも、このことを考慮する必要があります。

“退職給付債務”から“年金資産”を差し引いた金額を
「退職給付引当金」として負債計上するのですが、
このときに10年後の必要額を全額計上すると、それは
負債を過大計上していることになります。

通常の営業債務などと違って、退職金に関する債務は
その支払いまでの期間が長期になることから、その計上額の
基礎となる“退職給付債務”は割引計算することになります。

そして、この割引計算は、「あと何年で支払がやってくるか」
という、時間を軸に行っています。

そして、時間は進みます。
進めば、支払いのときが近づきます。

1年経てば、こうなります。

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<現在>と<現在+1年>を比べてみましょう。

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この増加部分が“利息費用”と呼ばれる部分です。

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“退職給付債務”の増加要因はこの二つだけです。

“退職給付債務”の減少要因

“退職給付債務”は従業員に対する責任ですので、
退職した従業員が退職金の支払いを受けることで
その責任は減少していきます。

退職した従業員が退職金の支払いを受けるパターンは
2つでしたね。

(1)退職一時金の受け取り
(2)企業年金の受け取り

この2つの事象が起きたとき、“退職給付債務”は
減少することになります。

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これらの増減要因をおさえておくことが
資料を読むときのポイントになります。

ここまで、オッケーでしょうか?

ではでは。

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【編集後記】

昨年秋に馴染みの店が急に閉店されてから、
気に入るコーヒー豆が見つからない・・・。
こういうの、意外と困りますね。

【昨日の一日一新】

クイーンエリザベス号入港見学
ドローン
元町3丁目

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石田 修朗

1976年生まれ。B型。姫路出身。 (雇わず、雇われずの)“ひとり税理士”として活動中。テニスとカレーを愛する、二児の父です。経営者の不安を安心に変えることにこだわっており、脱力することと手を抜くことのちがいを意識しています。