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長崎県五島市の奈留島にある江上天主堂。この夏、訪れました。

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盛況な“ふるさと納税”という名の寄附金制度

生まれ育ち、今もお世話になっている故郷姫路市への
納税額が減ってしまうことに多少の背徳感はあるものの
自治体への寄附制度、いわゆる“ふるさと納税”を
昨年に引き続き今年も実行しました。

今年は昨年同様、宮崎県都城市と、そして
夏の旅行でお世話になった長崎県五島市へ、
ささやかながら寄付をさせていただきました。

お礼の品として、宮崎牛やハム、ソーセージなどが
我が家に到着しています。

今年から住民税での控除額が2倍と拡大されていますし、
サラリーマン(給与所得者)等一定の方には
確定申告不要制度も設けられたので、
ますます活況だと聞いています。

日本に馴染みの薄い寄附という行為が浸透していくのは
悪くない流れだな、というのが私の感想です。
税金と違って使途について直接要望を
出すことができるのもいいですよね。

この“ふるさと納税”、あくまでも個人についての規定です。

会社(法人)も、地方自治体に寄附すること自体はできます。
会社(法人)において同じように地方自治体に寄附した場合、
それは「国、地方公共団体への寄附金」という扱いになり、
全額経費にでき、税負担が軽減されます。
ただし、“ふるさと納税”案内にあるお礼の品を
会社(法人)が受け取ることはできません。
(個々の自治体によって対応が異なります)

会社(法人)が地方自治体に寄附する場合、その全額を
経費にして、税金を軽減することができます。

では、地方自治体以外に寄附した場合、
いったいどのような処理になるのでしょうか?

会社(法人)における寄附金制度

寄附金を4つに分類

法人が寄附を行った場合、その相手先によって
支出した金額の取り扱いが変わってきます。

全額経費になって税負担を軽減できるものもあれば、
そうでないものもあります。

まず、支出した寄附金を4つに分類します。
(信託財産の話は除きます)

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①の「国又は地方公共団体に対する寄附金」というのは、
まさに国や地方自治体に対して支出した寄附金のことです。

国等に採納される寄附金はもちろんのこと、国立又は公立の
学校等の施設の建設などのための後援会に対する寄附金であっても
国等に帰属することが明らかなものは、これに該当します。

逆に、いったん国等に対して採納の手続きを経た寄附金であっても
最終的に国等に帰属しないものであるときはこれに該当しません。

②の「財務大臣が指定する寄附金」とは、
公益社団法人、公益財団法人、その他公益を目的とする事業を行う
法人や団体に対する寄附金のうち、財務大臣が指定するものです。

③の「特定公益増進法人等・認定NPO法人等に対する寄附金」は
②の「指定寄附金」よりは公益性が薄いものの、一般の寄附金と
同列に考えるのは適当ではないということで、一般の寄附金よりも
優遇されることになります。
特定公益増進法人等は、以下の6つの法人をいいます。

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④の「一般の寄附金」は、上記以外のものになります。
政治家や正当・政治家の後援会等に対する寄附金は、
この一般の寄附金に該当します。

税務上、どれくらい経費として認められるか

①の「国又は地方公共団体等に対する寄附金」と
②の「財務大臣が指定する寄附金」については、
その全額が経費として認められます。

税率を30%とすると、300,000円の寄附を行った場合
90,000円の税負担軽減効果が生じます。

次に、③をとばして先に④の「一般の寄附金」について検討します。

一般の寄附金については、その全額を無条件に
経費で認めるということはありません。
それを認めてしまうと、“税金を払うくらいなら
知り合いなんかに寄附しよう”ということが
まかり通ってしまい、結果的に国の税収が
落ち込んでしまうため、です。
交際費についての制限とその考え方はよく似ています。

では、いくらまでなら経費として認められるのか、
それは次の算式によります。

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分数が重なっていてイメージしづらいので、
これをこのように変更するとどうでしょうか。

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実際に数字を入れて考えてみましょう。

資本金等の額が1,000万円、所得(利益)が300万円だったとします。

なお、この場合の所得は寄附金の控除前の金額を用いますので、
利益が270万円で、利益算定上控除した一般の寄附金が
30万円だったという仮定です。すると、、、

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経費として認められるのは25,000円。
300,000円寄附したとして、
経費になるのは25,000円だけ。
残りの275,000円は支出したにもかかわらず、
税金計算上は経費として認められません。

では、飛ばした③について検討していきます。

③の「特定公益増進法人等・認定NPO法人等に対する寄附金」には
④の一般の寄附金の経費枠に加えて、特別枠が設置されます。

その特別枠の計算式はこちらです。

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この算式も先ほどと同じように加工してみましょう。

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先ほどの具体例の数値で計算すると、このようになります。

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この特別枠と先ほどの一般枠の合計額137,500円が
税金計算上の経費として認められます。

それでも、たとえ300,000円を支出しても、
162,500円は経費として認めてもらえません。

認定NPO法人が行う活動に賛同して協力しようとしても
これだけ経費外にはじかれてしまうとなると、
企業側の寄附という選択も二の足を踏んでしまいますね。

これは認定NPOとして活動する側にとっても、
大きな足かせといえるでしょう。

公益性の高い活動を民間が直接支援する仕組みが不可欠です。

もちろん、支出した寄附金のすべてが税務上の経費として
認められるような形を採るべきではないでしょうが、
政治不信が広がるこの国において小さな政府にしていくには、
公益性の高い活動を民間が直接支援する仕組みが不可欠ですので、
このあたりの制度設計の見直しが議論されることでしょう。

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【編集後記】
昨年、要らなくなった服を処分する際に
古着deワクチン”というサービスを使いました。
今年、さらに処分することにしたのですが、
そのときに利用したのは「ワールドギフト」という
国際社会支援推進活動を行う団体への寄贈。
サイトもわかりやすく、手続きもスムーズに
行えました。
昨年、下の本を読んで以来、着なくなったものを
処分し、いいものを必要最小限購入するクセが
ついてきました。

【昨日の一日一新】
山陽電鉄飾磨駅周辺で踏切見学

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石田 修朗

1976年生まれ。B型。姫路出身。 (雇わず、雇われずの)“ひとり税理士”として活動中。テニスとカレーを愛する、二児の父です。経営者の不安を安心に変えることにこだわっており、脱力することと手を抜くことのちがいを意識しています。