スポンサードリンク
先週に引き続き、簡易課税制度について。
スポンサードリンク
前回は簡易課税制度において行われる
みなし仕入率の計算の仕組みを紹介しました。
今回はさらに踏み込んで、2業種以上の事業を行う場合の
「みなし仕入率算定における特例」を紹介します。
目次
2業種以上の事業を行う場合の原則計算
まず、2業種以上の事業を行う場合の原則計算を
おさらいします。
第一種事業から第六種事業までの業種内容と
みなし仕入率は以下のとおりです。
![スクリーンショット 2015-12-10 15.04.34.png スクリーンショット 2015 12 10 15 04 34](https://ishitax-blog.jp/wp-content/uploads/2015/12/df8965e722b9f54407f9c6cd53375be6.png)
これら6種の事業すべてから同額の消費税を預かったする場合、
(課税売上金額が同額であった場合)
控除対象仕入税額は次の図(赤色)のようになります。
![スクリーンショット 2015-12-10 15.07.07.png スクリーンショット 2015 12 10 15 07 07](https://ishitax-blog.jp/wp-content/uploads/2015/12/e76c34a49d1ebf3b4200d4d3f5225647.png)
しかし、実際には、各業種ごとの売上高は異なります。
そこで、正確にイメージするためには、
まず各業種ごとに預かった消費税を棒グラフに表現して、
そのうちの各みなし仕入率相当額部分が控除対象になります。
<設例>
このような商売をしている会社があったとします。
![スクリーンショット 2015-12-10 15.04.04.png スクリーンショット 2015 12 10 15 04 04](https://ishitax-blog.jp/wp-content/uploads/2015/12/20a64098f8980f7582258ec63770d356.png)
まずは、業種ごとに預かった消費税を棒グラフ化して、
![スクリーンショット 2015-12-10 15.04.19.png スクリーンショット 2015 12 10 15 04 19](https://ishitax-blog.jp/wp-content/uploads/2015/12/d1d4915642fb332eca8af2fd5edb3d20.png)
それぞれにおける各みなし仕入率相当額を赤で塗ります。
![スクリーンショット 2015-12-10 15.04.25.png スクリーンショット 2015 12 10 15 04 25](https://ishitax-blog.jp/wp-content/uploads/2015/12/2b4bfce5e677eccb3e410d28250ae7db.png)
この赤色の部分が控除対象仕入税額ですが、
![スクリーンショット 2015-12-10 15.13.20.png スクリーンショット 2015 12 10 15 13 20](https://ishitax-blog.jp/wp-content/uploads/2015/12/6fd0f9d5faa234207fa0dda227662b92.png)
簡易課税制度における控除税額の算定式は、
条文によって次のように定められています。
![スクリーンショット 2015-12-10 15.11.54.png スクリーンショット 2015 12 10 15 11 54](https://ishitax-blog.jp/wp-content/uploads/2015/12/4a50548cc0054452c8fedaaffa76a12b.png)
したがって、いったん、黄色に占める赤の割合を算出して、
その割合を「預かった消費税」に乗じることで控除税額を算定します。
![スクリーンショット 2015-12-10 15.13.26.png スクリーンショット 2015 12 10 15 13 26](https://ishitax-blog.jp/wp-content/uploads/2015/12/7e82c3f96a710a33d3097dd4f308588a.png)
みなし仕入率の特例計算
先ほどの、黄色に占める赤色の割合を、「みなし仕入率」といいます。
この「みなし仕入率」の計算は、上記方法によるのが原則ですが、
別途特例が設けられています。
そして、原則によるか特例によるかはその時点で判断すればよいので、
受験上は有利判定を行うことになります。
「みなし仕入率」が大きい方が、控除税額が大きくなり、
納税者有利となるため、「みなし仕入率」がより大きい方を
選択してください。
特例① 特定の一事業の課税売上高が全体の75%以上
特定の一事業の課税売上高が75%以上である場合、
その75%以上の業種のみなし仕入率を
全体のみなし仕入率として適用することができます。
たとえば、上記設例の場合、
全体の売上高が100,000であるのに対して
第三種の売上高は単独で80,000あります。
つまり、全体の80%を占めているため、
今回の特例適用対象となります。
図で示すと、青色で囲んだ部分が控除対象になります。
![スクリーンショット 2015-12-10 15.44.31.png スクリーンショット 2015 12 10 15 44 31](https://ishitax-blog.jp/wp-content/uploads/2015/12/1b87113e3e88da11d53d8a166dabd070.png)
算式によると次のとおり。
![スクリーンショット 2015-12-10 15.38.07.png スクリーンショット 2015 12 10 15 38 07](https://ishitax-blog.jp/wp-content/uploads/2015/12/d4020f42fd87eead19e7e5452472f929.png)
特例を適用すると、「みなし仕入率」は70%・・・、
原則計算(72.6%)の方が有利ですね。
この場合には、この特例は使わない方が有利ということになります。
第一種が単独で75%以上である場合には、
全体のみなし仕入率が90%となり、絶対に有利となりますが、
![スクリーンショット 2015-12-10 15.29.35.png スクリーンショット 2015 12 10 15 29 35](https://ishitax-blog.jp/wp-content/uploads/2015/12/29d88272c56cf5f90f7854d223b41d10.png)
それ以外については、必ずしも特例が有利になるとは限りません。
![スクリーンショット 2015-12-10 15.29.48.png スクリーンショット 2015 12 10 15 29 48](https://ishitax-blog.jp/wp-content/uploads/2015/12/760ab81203a3b62cf2918bab92ec9018.png)
必ず算定したうえで、比べて判定しましょう。
特例② 特定の二事業の課税売上高合計が全体の75%以上
特定の二事業の売上高合計が全体の75%以上である場合には、
もう少し計算が複雑になります。
その特定二事業に係るみなし仕入率のうち、
低い方のみなし仕入率をその二事業以外の事業に
適用することができます。
たとえば、先ほどの設例の場合、
第三種事業が単独で80%あるということは、
第一種事業と第三種事業の合計は必ず75%以上になります。
したがって、この特例の適用を受けることができます。
第一種と第三種の場合、それぞれのみなし仕入率は
90%と70%ですので、低い方というのは70%になります。
この70%を、第一種と第三種以外の事業に適用します。
この青で囲んだ部分を控除対象にしてくれます。
![スクリーンショット 2015-12-10 15.43.03.png スクリーンショット 2015 12 10 15 43 03](https://ishitax-blog.jp/wp-content/uploads/2015/12/3fdd767d82f15a2354024b19302adb54.png)
第二種から控除できる金額は10%分減り、
反対に、第四種から控除できる金額は10%分増えます。
計算してみると、次のようになります。
![スクリーンショット 2015-12-10 15.51.11.png スクリーンショット 2015 12 10 15 51 11](https://ishitax-blog.jp/wp-content/uploads/2015/12/5b9600a168dc9fb1c03642358d9a8281.png)
原則よりも、わずかですがみなし仕入率が大きくなりました。
こちらの方が有利になりますね。
さて、第三種単独で75%以上ということは、
第二種と第三種の合計でも75%以上となります。
この場合、控除対象額は青で囲んだ部分です。
![スクリーンショット 2015-12-10 15.53.38.png スクリーンショット 2015 12 10 15 53 38](https://ishitax-blog.jp/wp-content/uploads/2015/12/d5b963c73c0fbcc8f778210c1f3a03a6.png)
第一種から控除できる金額が20%分減り、
第四種から控除できる金額が10%増えます。
計算式では、次のようになります。
![スクリーンショット 2015-12-10 15.54.32.png スクリーンショット 2015 12 10 15 54 32](https://ishitax-blog.jp/wp-content/uploads/2015/12/54ca6b23220c800a3340168dba52842d.png)
これだと、原則や特定二事業(Ⅰ&Ⅲ)の方が大きいですね。
したがって、Ⅱ&Ⅲの組み合わせは不利になります。
上記設例の場合、最終的に最も有利なのは<Ⅰ&Ⅲ>の特例です。
判定のポイント
上記設例で考えると、第三種と第四種の組み合わせは
明らかに不利になります。
なぜなら、70%を軸に、残りに60%を適用するなら、
すべてに70%を適用する<特定一事業>の方が
有利になることが明らかだからです。
Ⅲ&Ⅳ
![スクリーンショット 2015-12-10 16.09.18.png スクリーンショット 2015 12 10 16 09 18](https://ishitax-blog.jp/wp-content/uploads/2015/12/570c1263155ab4a57e13e040bb7a2302.png)
すべてⅢ
![スクリーンショット 2015-12-10 15.29.48.png スクリーンショット 2015 12 10 15 29 48](https://ishitax-blog.jp/wp-content/uploads/2015/12/760ab81203a3b62cf2918bab92ec9018-1.png)
第三種事業から預かる消費税が最も大きい場合、
第一種と第三種が成立するときに、この組み合わせが最も有利で
第二種と第三種の組み合わせが不利かといえば、
それは計算してみないとわかりません。
Ⅰ&Ⅲ
![スクリーンショット 2015-12-10 16.01.45.png スクリーンショット 2015 12 10 16 01 45](https://ishitax-blog.jp/wp-content/uploads/2015/12/abf24f891092362dc9696b70ff84d6a2.png)
第二種が、10%減ります。
Ⅱ&Ⅲ
![スクリーンショット 2015-12-10 16.01.26.png スクリーンショット 2015 12 10 16 01 26](https://ishitax-blog.jp/wp-content/uploads/2015/12/ec5e353fe6b1f12c47677e730946c225.png)
第一種が20%減ります。
第四種以下は違いがありません。
たとえば、下記設例の場合どうでしょう?
![スクリーンショット 2015-12-10 16.02.56.png スクリーンショット 2015 12 10 16 02 56](https://ishitax-blog.jp/wp-content/uploads/2015/12/ba8ad5dacf570177eeda88738b4756db.png)
第一種の20%は、12です。
第二種の10%は、94です。
この場合、Ⅱ&Ⅲの組み合わせの方が有利になります。
・原則計算
![スクリーンショット 2015-12-10 16.05.00.png スクリーンショット 2015 12 10 16 05 00](https://ishitax-blog.jp/wp-content/uploads/2015/12/a652cbc4b65acfa994b08da018dd5886.png)
・特定一事業
![スクリーンショット 2015-12-10 16.05.06.png スクリーンショット 2015 12 10 16 05 06](https://ishitax-blog.jp/wp-content/uploads/2015/12/1a852b148eb397a051d83975cd24f214.png)
・特定二事業(Ⅰ&Ⅲ)
![スクリーンショット 2015-12-10 16.05.15.png スクリーンショット 2015 12 10 16 05 15](https://ishitax-blog.jp/wp-content/uploads/2015/12/7ec0db6c89662712db6c056d3a59ae41.png)
・特定二事業(Ⅱ&Ⅲ)
![スクリーンショット 2015-12-10 16.05.20.png スクリーンショット 2015 12 10 16 05 20](https://ishitax-blog.jp/wp-content/uploads/2015/12/99d25eb01ec23cc55447be13e331d2be.png)
特定二事業の特例を計算する場合、
法律に忠実に行うのであれば、すべての組み合わせについて
計算して、有利なものを選択することになります。
しかし、受験上は明らかに不利なものについては、
コメントを付したうえで省略できます。
では、明らかに不利なものはどのように見つけるか、
それはすこしややこしいですが以下のようになります。
<パターン1>
メインの業種がそれ単独で75%以上である場合、
それより下位の業種の組み合わせは明らかに
特定一事業(メインだけ)よりも不利になるので、
判定は省略できます。
メインの業種よりも上位の業種との
すべての組み合わせについて判定してください。
![スクリーンショット 2015-12-10 16.36.43.png スクリーンショット 2015 12 10 16 36 43](https://ishitax-blog.jp/wp-content/uploads/2015/12/497e0e7e858faff74286ebc8be200937-1.png)
メインの業種がそれ単独で75%に満たない場合は
判定が少し複雑になります。
<パターン2>
メインよりも上位との組み合わせで75%以上になる場合は、
上位のすべての組み合わせについて判定が必要になり、
メインよりも下位との組み合わせの判定は要りません。
![スクリーンショット 2015-12-10 16.36.50.png スクリーンショット 2015 12 10 16 36 50](https://ishitax-blog.jp/wp-content/uploads/2015/12/78944089d6421bfad4de00b3e26a7148.png)
<パターン3>
メインよりも上位との組み合わせで75%に満たない場合は、
メインよりも下位との組み合わせで判定をします。
このときは、メインよりも下位の業種のうち、上から順番に
判定していき、最初に成立した組み合わせが特例の中では
最も有利になるので、それより下位のものとの組み合わせは
判定不要です。
![スクリーンショット 2015-12-10 16.36.56.png スクリーンショット 2015 12 10 16 36 56](https://ishitax-blog.jp/wp-content/uploads/2015/12/14bd762180aaec93d768c268b21a5412.png)
実務では簡便ではあるものの、試験問題としては
決して簡便ではない、『簡易課税制度』の
理解の一助となれば幸いです。
==============================
【編集後記】
今日は鈴鹿市まで遠征。
年に一度の監事監査報告でした。
【昨日の一日一新】
相互会会長としてビルと折衝
==============================
石田 修朗
最新記事 by 石田 修朗 (全て見る)
- 記念日に滝に行ってきた話 - 2020-09-01
- 【写真】2020年6月の活動報告 - 2020-07-05
- 【備忘録】2020年5月の姫路城写真活動報告 - 2020-06-01