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軽減税率対象売上とそれ以外の売上の管理が困難な場合の特例について。

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中小事業者のための税額計算の特例

消費税を納める義務のある事業者が
消費税の納税額を計算する場合、

「売上等で預かった消費税」から
「仕入等で支払った消費税」を
控除した残額が納税額

という計算が原則です。

従来の単一税率であれば
それほどむずかしくありませんが、
売上等、仕入等の両方に
標準税率(10%)と
軽減税率(8%)が
混在することになると
その仕分け作業は
軽くない負担となります。

そこで、中小事業者においては
税率ごとの管理ができないなど
区分することが困難な事情があれば
簡便計算を使っていいという
ルールが設けられています。
(ただし期間限定で)

なにをもって困難とするか、
その困難の度合いを問わないことと
されているため、事実上はセルフジャッジ。
困難な事情があると判断すれば
それは困難な事情です。

実務の上では
簡便計算を使って有利になるなら
これを使おうという有利選択も
可能となります。

また、ここでいう中小事業者とは
基準期間の課税売上高が5,000万円以下
かどうかで判断されます。
(資本金の額の多寡は関係ありません)

「基準期間」とは
個人事業者であれば2年前、
法人であれば原則2期前、
がそれに該当します。

困難な事情があるというのが
事実上セルフジャッジですので、
「2年前の課税売上高が5,000万円以下」
の事業者
であれば、
今回紹介する簡便計算が使えると
いうことになります。

売上税額計算の特例

概要

売上等で預かった消費税を
税率ごとに区分して正しく
算定することが困難な場合、
以下の簡便計算で
算出した割合を使って、
標準税率分の売上と
軽減税率分の売上を
按分計算します。

スクリーンショット 2019 08 22 16 46 36

簡便計算は全部で3種類。

業種によって限定されるものもあります。

順を追って見ていきましょう。

①<仕入割合>小売等軽減仕入割合の特例

こちらは利用できる事業者が限定されます。

具体的には、卸売業もしくは小売業を営む
事業者のみ
が使える特例計算です。

なお、仕入側において軽減税率適用分と
標準税率適用分を区分
していないと
この特例計算はできません。

スクリーンショット 2019 08 22 17 04 20

卸売業・小売業に関する課税仕入れだけを
抽出する作業が必要になります。
それ以外のものと区別するために
摘要欄にマークをつけるといった
工夫が必要になります。

こちらを利用した場合、
仕入税額の計算において
簡易課税制度が使えないので
注意しましょう。

②<営業日割合>軽減売上割合の特例

こちらはすべての業種において
利用できる特例計算です。

セールなど特別な販売期間を含まない
10日間を抽出して概算で
軽減税率対象品目の売上割合を
算出します。

スクリーンショット 2019 08 22 17 04 28

これが一番使いやすい特例です。

10日間のデータを抽出すればいいわけですから
それほど骨の折れる作業もありません。

事業ごとに異なる10日間を抽出しても
さしつかえありません。

③<半々>50%の特例

こちらも、すべての業種で
利用できる特例計算です。

①も②も困難な場合において
軽減税率対象品目の売上金額が
だいたい50%以上であれば、
50%を軽減税率対象課税売上高として
「預かった消費税」を計算しようというもの。

スクリーンショット 2019 08 22 17 04 36

一見シンプルで使いたくなりますが
これはできるだけ使いたくないやつです。

本当に50%くらいであれば
使ってもいいですが、
軽減税率対象品目の売上金額が
大半を占める場合には
やめておきましょう。
多少手間がかかっても
きちんと計算しないと損をします。

たとえば、売上総額3,000万円、
80%が軽減税率対象売上だとします。

厳密に計算すれば、
売上高の80%は
軽減税率対象売上高として
認定されます。
その税込価額の8/108(177万円)が
「預かった消費税」として
納付税額の計算上加算されます。
残りの20%は標準税率対応分として
その税込価額の10/110(54万円)が
「預かった消費税」として
納付税額の計算上加算されます。
合計で231万円です。

このケースで今回の特例を使うと
売上高の50%部分にしか
軽減税率の適用がおよびません。
税額にして111万円です。
残りの50%の売上については
その税込価額の10/110(136万円)が
「預かった消費税」として
納付税額の計算上加算されます。
合計で247万円です。

本来8%の預かりのものを10%で
計算することになるので、
預かっていない税金まで
自己負担で納めることになります。

面倒に思ってもきっちり区分して
③を使わなくていいようにしておきたいです。

特例が使える期間

売上税額に関する特例計算は
決算の時期に関係なく
2019年(令和元年)10月1日から
2023年(令和5年)9月30日までの
期間における取引についてのみ、です。

したがって、9月決算法人以外の法人では
期の途中で特例が使えなくなる時点が
やってきます。

法人なら2023年9月30日を含む課税期間
個人事業者なら2023年

このときまでに原則計算ができる体制を
整えておきたいです。

期中で切り替わるとか、
とてもめんどくさいですので。

仕入税額の計算の特例はこちら。

<消費税>軽減税率導入に伴う税額計算の特例(仕入編)

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【編集後記】
24日土曜日、TAC神戸校の
オープンフェスに参加します。
軽減税率の話(13:10〜)やら、
科目選択の話(14:20〜)やら、
新しいカリキュラムについても
もちろん話しますよ。
個別相談会もやっています。
わたしは15:30〜17:30担当。
お時間ある方はぜひ神戸校まで
お越しください。
(予約不要です)

夏の税理士オープンフェス | 税理士 |資格の学校TAC[タック]

【昨日の一日一新】
カリスマ講師にとある情報提供

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❐石田修朗税理士事務所HP

石田修朗税理士事務所[姫路]

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石田 修朗

1976年生まれ。B型。姫路出身。 (雇わず、雇われずの)“ひとり税理士”として活動中。テニスとカレーを愛する、二児の父です。経営者の不安を安心に変えることにこだわっており、脱力することと手を抜くことのちがいを意識しています。